会長意見書

2018年度 会長意見書

「はじめに」

以前の私にとって社会とはただただ遠い存在のものであった。新聞や雑誌、テレビなどの情報を頼りに、現状に対しての不満や将来への漠然とした不安を抱きながら、自分ではどうすることもできない諦めと、損だけはしないように生きよう、自分が豊かであれば、幸せであればと日々を過ごしていた。じつに我儘で勝手な青年であった私にも転機が訪れた。それは青年会議所との出会いである。同世代の人間が、社会という漠然としたものに圧倒的な熱量で真摯に向き合い、何かしらの解答(こたえ)を出し、その解答(こたえ)の実現に向けて行動している姿に驚かされ、憧れ、自分もそのようになりたいと心から思った。

その後青年会議所で様々な経験をし、分かったことがある。国家や地域があって、国民・市民が存在するのではなく、我々個人の集合体が地域であり、国家だということである。すなわち国民一人ひとりの意識が高まることが社会をより良くすることに繋がる。だからこそ、我々の手で社会の問題を解決し、次世代により良いカタチで引き継いでいくことは、現在を生きる我々にとって「使命」ともいうべき役割である。社会に対して関心をもち、主体者意識を高めることがすべての始まりだといっても過言ではない。地域という現場に一番近いところにいる我々JAYCEEだからこそ主体者意識をもち、一人でも多くの市民・国民を巻き込み、明るい豊かな社会の実現に向けた取り組みをしようではないか。

「インフラ整備から地域の未来を考える」

私たちが暮らす東京のインフラは高度経済成長期に集中的に整備され、今後急速に老朽化することが懸念されている。今後20年間で、建設後50年以上経過する施設の割合は加速度的に高くなる見込みであり、一斉に老朽化するインフラを戦略的に維持管理・更新することが、デフレ下における経済対策の面からも、防災の観点からも重要である。

インフラを強化し、地域間連携を促進することにより、新たなヒト・モノ・カネの流れを生み出し、地域の活性化に繋げていくことはもちろん、公共施設や空港・港湾施設の統合・再配置・利用方法の見直しなどを行うことで、これから直面する人口減少社会へ向けた効率化も図れると考える。また、首都直下型地震が想定される東京では、耐震化や交通インフラの整備・老朽化対策は緊急時に都民の命を守ることにも直結する。

それぞれの地域を知り、広域的なネットワークをもつ我々は、インフラ整備について独自の視点で調査・研究し、老朽化対策に留まらない地域振興に繋げていきたい。

「多文化共生がもたらす、世界都市・東京への発展」

世界では行き過ぎたグローバリズムの結果、貧富の格差が拡大し、それを不満に思う多くの自国民の支持を得て、米国ではナショナリズムを掲げるリーダーが誕生した。冷戦が終結し、同時多発テロが起こり、テロとの戦いが始められて久しいが、一向に収まる気配がないように感じる。近年では日本人もテロの標的とされ、痛ましい事件も発生している。また、国内に目を移しても一部の出自をもつ住民へのヘイトスピーチなどの偏った思想をもつ人々も存在している。

その他者を受け入れない閉鎖性は、異なる要素をもつ他者への畏怖と、実体験を通して関わりをもたなかったこと、問題の責任を他者に転嫁していることなどが原因として考えられる。

我々の暮らす東京は、人種・言語・宗教・文化の異なる住民が多く暮らす地域を抱えている。これから直面する人口減少社会を乗り切っていくうえでも、外国人労働者・移民の受け入れなど議論すべきテーマは山積している。

だからこそ人種・言語・宗教・文化が異なる者同士が、自分と異なる部分をもつ他者を受け入れ、相互に理解を深めていくことが、個人レベルでは重要である。さらには、多くのひとが大切にする自由、人権、平等といった共通の価値観を担保する共同体意識をもつことで、開かれたマインドで全ての人と愉しむ世界都市・東京への足掛かりとしていきたい。

2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催に向け、意識が高まっている現在が絶好の機会である。

「主権者意識の醸成と政策リテラシーを育む」

政治への関心が薄れ、投票率の低下が問題となっているが、自分が立候補する以外、意思を表現する方法は投票行動しか存在しない。政治や行政に漠然とした不満をもっているだけでは、現状を変えることはできない。

政党や候補者は、投票に来る世代に向けたメッセージを重点的に発信、実行するが、多くの若者が投票に行き、政策を見て判断するようになったらどうだろうか。将来に負担を先送りするような政策を訴えることは、おそらく難しくなるはずである。2016年6月の参議院議員選挙から選挙権がこれまでの20歳以上から、18歳以上に引き下げられ、多くの自治体で18・19歳の投票率は20歳台よりも高い数字を記録した。

しかしながら、近年の選挙結果はいわゆる「風」を受けた政党が大勝し、必ずしも政策を見て投票行動をしたと思えないような大差が生まれることがある。一次的な報道を見て、判断するのではなく、候補者や政党が掲げる政策のメリット・デメリットを比較し、判断する能力(政策リテラシー)も同時に養っていく必要がある。東京ブロック版みらいくの改定も含めて、前向きに検討していきたい。

さらには政策がどの程度実施されているのか、検証する仕組みを構築し広めることが、責任をもった政策提言を促すことに繋がる。これまで実施してきた公開討論会と合わせて取り組んでまいりたい。

これらの取り組みを通して主権者意識を高め、政策リテラシーを育むことが憲法輿論確立に向けても意義があると考える。

「自ら考え、行動する人財を育むアカデミー研修」

日本青年会議所の2010年代運動指針に「自立」と「共助」の調和というキーワードがある。

「自立」とは社会的な役割を果たす公共の担い手であり、「共助」とは様々なコミュニケーションを通じてお互いが存在を認め合い、共にたくましく「生き抜く」ことである。この「自立」「共助」を兼ねそろえた人財は、自ら考え、行動できるはずである。 

青年会議所に入会し、日の浅いメンバーに理念、どのような方法をもって問題解決に取り組むのか、基礎知識を伝えると同時に、事業や研修を通じて役割を果たすことでJAYCEEとしての「自立」を促し、共に行動することでアカデミー生同士が繋がり、絆を育み「共助」の精神を養い、故郷を愛し、先人に敬意を払い、己を律し、友を助け、何度でも行動する人財を育成してまいりたい。

「会員拡大と交流」

20歳から40歳の年齢制限がある青年会議所は、新たなメンバーを迎え続けなくては存続の危機を迎えるという側面もあるが、同時に時間の経過とともにメンバーが入れ替わる流動性のある団体であり、本人が望みさえすれば多くの機会を得ることができる。

何よりも私自身が、これまでの体験から青年会議所以上に魅力的な団体はないと確信している。「JCしかない時代」から「JCもある時代」に変わったと言われているようだが、私は同意しない。これほど社会に目を向ける意識と行動が問われ、機会に恵まれ、己を磨いてくれる学び舎はない。だからこそ、青年会議所には人生の大切な時間を費やす価値がある。

ひとはひとでしか磨かれないという言葉がある。共通の理念に向けて、ともに行動する仲間の存在は、自己成長を促す意味でも、組織を活性化させていくうえでも重要な要素である。

本年も成功事例紹介だけに留まらず、導入に向けた支援を行い、各地会員会議所の会員拡大に繋げてまいりたい。

また、各地会員会議所との連携、会員会議所間の交流を推進し、活力を高める一助としていきたい。

「主体者意識を高揚させ、参画意識を高める」

近年の東京ブロック大会は公益社団法人への移行を機に、より多くの一般市民の来場が参加する一大イベントとなった。多くの来場者が見込めるブロック大会が、最大の運動発信の場であることは疑いようのない事実である。この絶好の機会を利用し、我々の考える運動を効率的に発信するためには、対象者の来場動機を正確に捉えた事業構築が重要である。我々と同世代の家族連れをメインターゲットとし、ブース出展を多く設えるのであれば、屋内ホールで開催するフォーラムよりも、屋外で体験型の学びを用意する方が多くの来場者にとって機会を創出できるはずだ。このように、対象者とテーマによって柔軟に手法を変化させて、来場者の関心を引き、主体者意識を高揚させ、参画意識へと繋げたい。

この試みを、各地会員会議所が行う事業にロールモデルとして提供することがLOM支援に繋がると考える。この最大の運動発信が、東京ブロック協議会内各地会員会議所メンバーに、東京ブロック協議会の一員であることを改めて意識させ、参画意識を高めることになり東京ブロック協議会の活力をより高めることに繋がるはずだ。

「横断的・戦略的広報の確立」

問題解決に向けた取り組みも、発信ができなくては、波及効果は望めない。予算や人的資源が無限に使えるわけではない。費用対効果の見込める一定規模の事業を通して、広く社会に発信することが求められるが、果たしてこれまで、十分にできていたのだろうか。

事業を発信し動員を図ることに限らず、いつ、どのような問題に、どのように取り組んで、どのような成果が出たのかを発信することで、広く社会に影響を与える可能性が生まれる。我々の試みを土台として、第三者が社会をより良くする機会を生み出すことに繋がる。今年度は、各委員会に広報担当を配置し、担当委員会と連携することで、戦略に基づいたタイムリー且つ、充実した内容を発信することに努めていきたい。また、ブロック大会など複数の委員会が関係する案件に関しては、戦略会議を開催し、多様な視点を生かした発信をしたい。

「自立と共助が調和した、新たなTOKYOの創造に向けて」

私は、2009年のアカデミー研修委員会への出向を皮切りに、2012年当時の会員大会国分寺大会をLOMの専務理事として経験し、多くの時間を東京ブロック協議会の活動・運動とともに過ごしてきた。2015年度にはアカデミー研修委員会の委員長を経験させていただき、本当に多くのことを学ばせていただいた。その過程ではたくさんのメンバーと出会い、友情を育んできたと感じている。振り返ると私のターニングポイントはいつも東京ブロックとともにあったと思う。

そんな東京ブロック協議会で育てていただいた私ができる恩返しは、東京から日本を変える行動を起こすことであり、各地会員会議所への最大限の支援である。

自立と共助が調和した、新たなTOKYOの創造に向けて。

公益社団法人日本青年会議所
関東地区 東京ブロック協議会
第47代会長 藤原 英作

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